00_main_IMG_1249_r

買う食べる

小川町》「江戸三大すし」の一つ『笹巻けぬきすし(ささまき けぬきすし)』。毛抜で魚の小骨を抜く様を見て『面白きことよ』に始まり300年超。

2015/07/27  

都営新宿線 小川町駅のB5出入口を出たら、出入口とは反対の方向に向かいます。直近の「靖国通り(やすくにどおり)」と「本郷通り」が交差する「小川町交差点」を左に折れ、御茶ノ水方面へ数十メートル歩くと、そこに「笹巻けぬきすし総本店」があります。

01_IMG_8677_r
「笹巻けぬきすし」は “ ささまき けぬきすし ” と読みます。

創業は江戸時代中期、赤穂浪士(あこうろうし)の討ち入りがあった年でもある1702年(元禄15年)で、越後の新発田(しばた)出身の松崎喜右衛門(まつざききえもん)初代が「竈河岸(へっついがし:現在の人形町)」に店を構えたのが始まりです。

のちに親戚筋や古い番頭さんなどへの暖簾分け(のれんわけ)で店を広げたそうですが、そのうち残ったのはここだけ。神田の昌平橋のそばにあった店(当時の店名は宇田川)が関東大震災後、小川町に場所を移して今に残っています。

02_IMG_8679_r
江戸で花開き名物として謳われた寿司として、竈河岸の毛抜鮓(けぬきすし)、両国の与兵衛寿司(よへえすし)、安宅(あたけ)の松が鮨(まつがすし)の三つは「江戸三鮨(えどさんすし)」と称されていますが、このうち現存するのも、ここ「笹巻けぬきすし」の毛抜鮓だけです。貴重な文化財とも言えます。

03_IMG_8686_r
震災で焼ける前にあった絵草紙(えぞうし)を、先代が思い起こし、絵師に描いてもらった画には由緒が描かれています。

鮨を笹で包んでいるのは、古くは兵糧(ひょうろう)を包むのに、殺菌作用がある笹が使われていたという伝えに初代が習ったものです。この鮨のネタの一つに「鯛(小鯛)」がありますが、鯛の小骨だけは酢でしめても柔らかくならないので毛抜きで抜いていたそうです。その様子を旗本など来店した諸侯(しょこう)が面白く思ったことが広まり「けぬきずし」となったということです。現在も小骨を毛抜きで抜いています。

04_IMG_8685_r
お店には12代目が記した笹巻けぬきすしの由来があります。「…旗本や松平候等幾多の諸侯御来店の折、毛抜にて魚の小骨を抜き鮨を作るを見て『面白きことよ』と興ぜられ、笹巻鮨を毛抜鮨とも呼び益々世に広まりたり…」

05_IMG_8688_r
江戸の鮨は、今とは違い長く保たせるために塩気も酸味もきついものだったそうです。それを更に笹で包むということですから、元来この「笹巻けぬきすし」は折り詰めで持ち帰って食べるのが正しい鮨といえるでしょう。折り詰めの鮨は翌日まで保ちます。3時間ほど置いてからの頃合いの方が美味しいそうです。そういう訳でお店は基本「お持ち帰り」が専門です。

06_IMG_8704_r
持ち帰る折り詰め12ヶもお願いしましたが、お店のショーケースの横では、その日のランチセットや笹巻けぬきすしが、その場でいただくことが出来るので、食べていくことにします。お店の外に書いてあったランチセットと笹間巻きけぬきすし7ヶを注文します。

「けぬきすしは、すっぱいですけど大丈夫ですか?」と女将が声をかけてくださいました。300年以上引き継がれた、その「酸味の利いたおすし」を求めてきたので、でもちろん「大丈夫です。お願いします。」とこたえます。気遣いあるお声がけは心地よいものでした。
※今は、戦前にくらべて随分と酸味をおさえているそうです。

07_IMG_8709_r
この日のランチセット 税込1,050円。
穴子とマグロの二色丼、けぬきすし(玉子、のり巻き)、小鉢(夏野菜の天ぷら)、漬けもの、お吸いもの。

08_IMG_8711_r
少なめのご飯に、マグロと穴子はたっぷりな量。マグロは赤身と漬けの二色。穴子はふっくらと煮あげられ、甘い煮詰め(タレ)がかかっています。

09_IMG_8725_r
やわっと、ほろっと。

10_IMG_8722_r
おくら、豆腐、おふ、結んだ竹輪が入ったお吸い物。お出汁は、簡単に使いたくない言葉ですが“ 身体に染みる ”上質な美味しさです。

11_IMG_1388_r
メインが海鮮なので、2ヶの笹巻けぬきすしは、玉子とかんぴょうののり巻き。他では口に出来ない個性的な、玉子とかんぴょうです。

12_IMG_8706_r
この値段にして、華やかで品も宜しく、満足感のある美味しいランチセットでした。スタッフも笑顔になります。

13_IMG_1253_r
笹巻けぬきすし7ヶ 税込1,804円。
7色のすしダネは、鯛、光り物(コハダ)、おぼろ、玉子、海老、かんぴょう巻き2ヶ。この熊笹は裏がツルツルの種類だけを選んで、一枚一枚丁寧に洗ったものです。焼いた小鯛のカシラが入った潮汁(うしおじる)、緑茶。この日はランチに付いている小鉢もサービスしていただきました。

14_IMG_1257_r
笹をとっていただきます。鯛の白、海老の赤、おぼろと玉子の黄色、コハダの青と銀、のり巻きの黒と華やかです。どのタネも一つ一つ丁寧な仕込みがされていることがわかります。そして、シャリが美味しいこと。現在のシャリとは違い、砂糖の甘さはなく、強めの酸味にちょうど良い塩気です。

米は固めすぎずない絶妙の加減です。手に持っても軽めで、食感は重すぎず、軽すぎず。押し寿司のようなものを想像していましたが、まったく違います。タネもシャリも余計なものを削ぎ落とし品格さえ感じるバランスで仕上がってます。

15_IMG_1255_r
焼いた小鯛のカシラが入った潮汁は、「付いてます。」というレベルではなく、とても上品で美味しい碗になってます。一口すすれば、香ばしさもかすかに感じるお出汁に、思わず「あぁー…」と声が出てしまいます。7ヶのすしと潮汁だけの組み合わせですから、すしの相方として自信を持って出されていることがわかります。いや、ほんっとに美味しい。

丁寧に作られた笹巻けぬきすしと潮汁を、お店で味わうランチもいいものです。お会計を済ませ、お願いしていた折り詰め12ヶを持ち帰ることにします。

16_IMG_6941_r
折り詰め(12ヶ)2,765円(税込)
外の包装には、江戸時代から続く笹と当たり矢の商標。粋なデザインです。「当たり矢」は矢が的中した状態で、物事が巧くいく、人気が出るなどの意味があります。

17_IMG_6954_r
中の箱の包みにも「当たり矢」。商売繁盛や様々な願いを成就する縁起物です。その中身も手間ひまかけた逸品「笹巻けぬきすし」が、結婚式の引き出物にも利用されるのも納得できます。

18_IMG_2456_r
一)鯛(小鯛)
魚は三枚におろし塩漬けし1日、出た汁をすてます。その後、酸度の高い一番酢に漬けて1日しめます。次に骨を抜き、酸度の弱い二番酢に3~4日漬けます。酸味の利いた独特の風味のタネは、こうして手間をかけて作られます。

19_IMG_2461_r
二)コハダ
現在の江戸前握り寿司でもお馴染みです。強めの酢でしめられた光り物は美味ですが、何日もかけて仕込みされたこのコハダの風味は、酸味が強いというだけでなく深みがあります。

20_IMG_2470_r
三)海老
海老は生きた小さい車海老(サイマキ)を使い、砂糖を少し加えた甘酢につけて使います。車海老の風味や食感を活かす仕込みです。

21_IMG_2477_r
四)おぼろ
甘くいった魚のそぼろです。このタネだけは甘いです。良く考えられています。好みのタネから食べるのですが、酸味が続く途中のこの「おぼろ」の甘さがまた良いアクセントになるのです。

22_IMG_2496_r
五)玉子
この玉子も個性的です。甘くはないです。軽く醤油で味付けされた薄焼きの玉子でシャリをくるっと包んであります。おぼろがあるので甘くなくて良いです。

23_IMG_2489_r
六)かんぴょう
他では食べることができない「かんぴょう」です。一般的に知られる甘からく濃いめの味付けのものも美味しいですが、醤油で煮られ、しっかりと食感を残した甘くない「かんぴょう巻き」も味わい深い逸品です。

24_IMG_2469_r
七)あわび
基本の7色のうち、光り物と白身魚は、その季節によって旬の素材に変わります。この折り詰めでは、あわびです。さわら、あじ、さより、青だい、わらさ、かんぱち、白魚、貝柱など、必ず旬の素材を加えて7色のタネを折り詰めにしてもらう。笹巻きから何が出てくるのか、ちょっと楽しみです。

25_IMG_8694_r
「毛ぬきすしかんだ祭りにきてさかす」
水原秋櫻子(みずはら しゅうおうし)

1892年(明治25年)神田神田猿楽町の産婦人科の息子として生まれた俳人・水原秋櫻子が詠んだ句からは、神田祭と毛ぬきすしへの愛情をみることができます。

唯一残った、江戸三大すしの一つ「笹巻けぬきすし」。
今、13代がこの味を守っています。
江戸時代の素朴にして洗練された「粋」なすし。
暑中でも保冷無しでお家へぶらさげて。
上等な折り詰めのお土産を見つけました。

笹巻けぬきすし総本店
住所東京都千代田区 神田小川町2-12宇田川ビル1F
駅・アクセス都営新宿線 小川町駅 徒歩2分
営業時間月~金 9:00~18:30
土 9:00~17:00
ランチ営業
定休日日曜・祝日
電話番号03-3291-2570

,


  1. このエントリーをはてなブックマークに追加
Translate »