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新馬場》鏝絵(こてえ)の名工・入江長八の大作「天鈿女命功績図(あめのうずめのみことこうせきず)」、津々浦々に建っていた「添浦高札(そえうらこうさつ)」も。貴重な現存品が「寄木神社」にあります。

2017/03/10  

京浜急行電鉄本線「新馬場駅」北口を出て、国道15号線沿いに北上したら一つ目の角を曲がり、「北馬場表参道通り商店街」に入ります。道なりに進んだ先にある丁字路で右折し、「山手通り」の向かい側へ横断歩道を渡り北へ進みます。

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聖蹟公園の交差点を超えて一つ目の角を右に曲がり、道なりに3分ほど進むと、右手に“しながわ百景”のひとつ「寄木神社(よりきじんじゃ)」があります。

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1598年~1614年(慶長年間)に創建されたという寄木神社の御祭神は、日本武尊(やまとたけるのみこと)と弟橘姫命(おとたちばなひめ)です。社伝によると、日本武尊が父の景行天皇(けいこうてんのう)から東征の命を受け、現在の神奈川県である相模国(さがみのくに)から千葉県の上総国(かずさのくに)へと海を渡ろうとしましたが、海の神の怒りで海が荒れ、船は沈没寸前になってしまいます。

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その時、同行していた日本武尊の妻・弟橘姫が海へ入水し、海の神の怒りを鎮めたため、日本武尊は無事に上総国へと渡ることができました。その際に破損した船の木片が品川浦に漂着したので、漁民達は木片を弟橘姫の霊とともに祀り、海上安全を願って寄木神社を創建したと伝えられています。弟橘姫の着衣が流れ着いたという説もあるようです。

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寄木神社の敷地内には社が3つあります。手水場(ちょうずば)のすぐ近くにある小さな「亀の甲社」は、明治時代の末に品川浦に迷い込んだ大きな海亀の霊が祀られています。

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正面の階段を登ってすぐ右手にあるのは「庄野稲荷社」。詳細は不明ですが、3つ連なる赤い鳥居が特徴的な、こじんまりとした社です。

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一番立派な寄木神社の社殿は、震災や戦災を乗り越え、江戸時代から変わらない姿で現存しています。

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社殿の前には三対の狛犬があり、手前の青銅製、奥にある尾流れ型、そして中央に、頭部がカッパの皿のように水がたまる窪みのある“かっぱ狛犬”と呼ばれる珍しい狛犬が鎮座しています。

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江戸名所図会 寄木神社/国立国会図書館ウェブサイトより転載
寄木神社にかっぱ狛犬が奉納された1828年(文政11年)当時、寄木神社の前には海が広がり、多くの漁船がここから海へと出ていました。

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かっぱ狛犬の皿部分にロウソクを立て火を灯すことで、暗い中で沖にいる船の目印にしたと伝えられています。当時はこの狛犬が灯台の役割を果たしていたのかもしれません。

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拝殿の奥にある本殿には、品川区の有形文化財「添浦高札(そえうらこうさつ)」と「天鈿女命功績図(あめのうずめのみことこうせきず)」があります。通常はガラス戸越しにしか見ることが出来ませんが、この日は運良く社務所に係の方が居らしたため、中を見せていただきました。

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本殿上方にあるのは「添浦高札(そえうらこうさつ)」。高札とは、規則や命令などを書き、往来など見えやすい所に掲げて世間に知らせる板です。江戸時代初期の1621年(元和7年)に幕府が始めたとされているこの高札は、全国津々浦々に建てられたので「浦高札(うらこうさつ)」と呼ばれていました。

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1711年(正徳元年)になると、海上航路の活発化に伴い海難事故が続出したため、対策として全国に「正徳の浦高札」と呼ばれる高札が建てられました。寄木神社にある高札は、その翌年「正徳の浦高札」の追加補充として建てられた「浦々添高札(うらうらそえこうさつ)」です。年貢の米を運ぶ船が破船した際の処置法・心得書を主とした二ヶ条からなる触書が記されています。区内に現存する二枚の高札のうちの一枚で、もう一枚は品川歴史館に保存されています。

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本殿正面の二枚扉の内面にある、漆喰の上に鏝(こて)を塗り立体的に描いた“鏝絵(こてえ)”「天鈿女命功績図(あめのうずめのみことこうせきず)」。向かって左扉には上の方に天総大神、下の方に天鈿女命を描き、右扉には猿田彦命が描かれています。

作者の入江長八(いりえちょうはち)は、1815年(文化12年)に伊豆の松崎に生まれ、1833年(天保4年)に江戸に出た後、建築物などの壁塗りを行う左官(さかん)職人として江戸時代から明治時代にかけて活躍した名工です。うるしを使って自由に彩色するなど、芸術面で高い評価を得た独自の漆喰鏝絵を生み出し「伊豆の長八」と名を馳せました。

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入江長八の作品の大半は震災や戦災で焼失してしまったため、現存している作品は全国に45点ほどしかないと言われています。多くは伊豆の松崎周辺に残っており、現在も都内で入江長八の作品を見ることが出来るのは寄木神社と、足立区にある橋戸稲荷神社のみ。中でも「天鈿女命功績図」は保存状態が良く、大変貴重とされています。

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本殿の外壁は、大谷石を使用した土蔵造りになっています。神社ではあまり見かけない造りですが、大切な本殿を災害や戦災から守ることが出来るよう、より頑丈な造りにしたかったのかもしれません。

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江戸時代から寄木神社は荏原神社(えばらじんじゃ)の末社となっているため、御朱印は荏原神社で貰うことが出来ます。

弟橘姫命と日本武尊の魂が祀られ、カッパ狛犬や添浦高札、名工の鏝絵などの文化財が今でも現存する寄木神社は、江戸時代を生きた漁師達の生活と信仰心を色濃く感じられるスポットです。

寄木神社
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1丁目35
駅・アクセス京浜急行電鉄本線 新馬場駅 徒歩9分


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